「あーあ。親ッさんになんて言えばいいんだろう?」
打った鉄砲の弾を拾いながら途方にくれていると、後ろから「おお、そこにいたのかね。」と女性の声で声をかけられた。振り返ると白髪の老婆と・・・
「あー!さっきぼくの鉄砲持ってった子ー!!」
のび太は指差して叫ぶと、その子はビクッと怖気づいて老婆の影に身を潜めた。
「やっぱり、これはテオロのとこにいる子のものかね。テオロがお前さんにやったんだろう?」
「はい、そうですけど。」
「まったく、何を考えてるんだか・・・、こんな子供の、しかも村の客人に得物を渡すなんて・・・。」
「はあ・・・。」
「そうだ、この際自己紹介しようかね。私はトゥスクル。一応ここの村長なんかをやっておるよ。」
「え?ってことはエルルゥさんのおばあちゃんで、ぼくたちを看病してくれた人?」
「ああ・・・。まあハクオロと比べればお前さんたちの傷はたいしたことなかったがね。」
「それでも色々と苦労かけたようで・・・、本当にありがとうございました。」
「なあに、子供が気にすることじゃないよ。ただ薬師として当たり前のことをしただけじゃからな。何もないとこだが、ゆっくりしてくとええ。」
「でも・・・ぼく達なんかがこの村にいたら、色々と大変なんじゃないんですか?」
のび太が言ってるのは無論この村の貧しさのことである。さっきから気になっていたのだ、この村のよそ者であるぼくらが、ただですら貧しいこの村にお世話になるのは、それだけでかなりの負担になるんじゃないか?と。
「遠慮せんでええって・・・。村として、客人をもてなすだけの貯えくらいはちゃんとある。」
・・・しかし、あの食事に、あの畑。自分に気を使わせないつもりで言ってる嘘にしか聞こえない・・・。

「それにテオロたちはお前さんたちを働かせようとしてるみたいだしねえ・・・。まあ。お前さんたちが働きたくないと言えば働なくてもええしな・・。」
「いえいえ、とんでもない。出来る限りがんばって働きます。いまいちダメかもしれないけど、みんながもっと幸せになれるように努力しますから!」
「そうかい・・・。なんかお前さんならそう言うと思ったよ。」
トゥスクルは微笑んで頷いた。
「そういうことならコレは返すべきだねえ・・。コラ、アルルゥ!」
「ん・・・。」
青い服を着てる物静かな女の子はアルルゥというらしい。この子もエルルゥと良く似た尻尾がある。
「エルルゥさんの妹さんですか?」
「ああ・・・。こう見えてもなにかと困るほど好奇心があって・・・。まあこの鉄砲のことは許してあげてくれんだろうかね?」
「ええ、いいですよ。」
嫌とはさすがに言えない。
「ホラ、アルルゥ。それをこの人に返しなさい。」
「・・・。ごめんなさい。」
アルルゥはそっと鉄砲をのび太に差し出した。
「どうしてこんな危ないもの打ったりしたの?」
「・・・・。楽しそうだったから。」
「・・・・楽しそう・・・か。」

・・・「ぼくも入れてよ」
・・・「なんで?」
・・・「えっと・・・楽しそうだから。」
・・・「あのね、のび太、お前に一体何が出来るんだ?このおれたちの研究に。」

それにしてもよく打てたもんだなと思う。意外とこの子は力があるのかもしれない。いや、もしかして自分は女の子より力がないのか?
「いいよ、またいつでも貸してあげるよ。でも今度からは一言言ってよね。」
「ん!」
怒られると思っていたアルルゥは嬉しそうに微笑んだ。
・・・なんだこの子、無表情だと思ったら笑うと可愛いもんじゃない・・・。
「やれやれ、もうお友達どうしとは、なかなかお前さんも隅におけないねえ・・・。」
「ええっ!!」
「・・・・!」
顔を真っ赤にしてアルルゥはポカスカとトゥスクルの胸を叩き始めた。
「わかったわかった・・・。じゃあここでさよならだ。ええとお前さんは・・・ノビタだったかな。」
「はい!ノビタです。」
「じゃあノビタ、また明日だね。ホラ、アルルゥも。」
「ばいばい。ノビタ。」
「じゃあね、ばいばーい!!」
のび太はトゥスクルたちが見えなくなるまで手を振り続けた。
「さて、ぼくも帰るとするかな。」
その帰り道、のび太はトゥスクルが言った『隅に置けない』が頭の中でぐるぐる回って、顔が時折耳まで真っ赤になっていたことは、誰にも言えるわけがなかった。



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